紙芝居「鳴る靴を履いたエゴ」

鳴る靴を履いたエゴ



ある日、粉屋の父が死にました。父が遺したものを3人の息子が譲り受けました。

長男は小屋

次男は鳴る靴

三男は長靴を履いた猫

三男の話はよく聞くので、今日は次男の話をします。



鳴る靴をもらった次男坊は酷くがっかりし落ち込みました。

「音の鳴る靴を履いてもうるさいだけだよ」

とほほ、、、

次男が落ち込んでいると、




鳴る靴が突然、喋り出しました


「やあ!!そう落ち込まないでよーー」


「僕を履いて歩いてごらんよ!!きっと良い事があるよ!!」


次男坊はびっくりしました


しかしちょうど靴がボロボロで壊れてきていたこともあり、鳴る靴を履いてみました。




とんとん  たたん   とんたったん 


たらったらたらたらたら  たらばー だでぃぎぎだ だだったー

ばっばっだでぃーあ

たったら らーらー ちゃんちゃん


鳴る靴は次男坊の足踏みにあわせて音を鳴らしました





わーーーーー!!!すごい!!

次男坊はびっくりしながらもとても喜びました

「おもしろいーーー!音が鳴ってリズムになった!心が躍るよ!!」


次男坊は鳴る靴がとても気に入り、いつも履くようになりました





鳴る靴を履いて街に出向く度、次男坊は色んな人の目に留まりました


ある人はその踊りを見て、たくさんの拍手をくれました。

珍しがって、小銭をくれる人もいました。

街の洋服屋さんも現れて、踊りに似合うスーツをプレゼントしてくれました




ずっとうつむいたばかりのおばあちゃんがすっかり元気になり、笑顔を取り戻しました

いつもでも終わらなかった街と街、国と国の抗争が終わりました





ある日、その噂が王様のところまで届き、お城に踊りを披露しに行くことになりました

とんたった とっんた ととんととん



鳴る靴と次男坊は もらったスーツを着て、髪をとかし、王様のいるお城に向かいました




王様は言いました
「君かね!とても素敵な踊りが踊れるそうじゃないか?」

「一度、その踊りを私にも見せてくれないか?」




次男坊はうなずき、、、


たたた  ばばん  たらたらたらたらたったーたら



でぃぎだがでぃぎだが

でぃぎだがでぃぎだが

でぃぎだがでぃぎだが



























ずかっかっかっ ずかっかっかっ ずかっかっかっ ずかっかっかっ

いーーーーあっとどんどん ばん

ばばばばばばばん!!!




おおおお!!!!!!
大きな大きな歓声と拍手がお城の中に鳴り響きました




王様はとても喜びました。

そして、次男坊の事をたいへん気に入り、次男坊にこう言いました。




「褒美はいくらでもとらす、裕福な暮らしも約束する。だからこのお城でいつも踊っていてくれないか!?」



王様は次男坊の前にたくさんの宝石や宝を用意し、交渉しました



次男坊は、少し迷ったような顔を見せましたが、すぐに首を横に振りました






「とても嬉しいお言葉ですが、お応えすることができません」


「なぜなんだ!なんでも願いは叶えてあげる!裕福な暮らしを保証してやるんだぞ」


「はい、とても嬉しいことではありますが、それはできません」

「この靴を履いていると、いつでも心が弾むし、それを見て喜んでくれる人もいる。
 落ち込んでいる時は慰めてもくれるんです。」


「だから、世界中の色んなところにこの靴と一緒に行ってみたいんです。そしてたくさんの人たちと繋がって喜んでもらいたいんです。だから、ゴメンナサイ。」


王様は酷くがっかりしましたが、次男坊の意志は固く、丁重にお断りをして、

お城をあとにしました。




鳴る靴は言いました。

「いいのかい?せっかくの誘いだったのに。僕はお城で暮らすのも悪くないなーと思ったよ」


「いいの!いいの!きっとお城にいるより楽しい事がこれから沢山待っているんだから」


鳴る靴と次男坊は、あはは!と笑顔になりました。






梅雨の時期、雨が降り続いている日でしたが、軽快に歩く次男坊のリズムと混ざり、

それは音楽のようでした


そして、足跡の後ろには、リズムに乗って喜んでいるお花達が沢山いました



二人はそれをみて、また笑顔になりました。





鳴る靴と次男坊は、その後、色々な世界を旅して、人々を楽しませ、喜ばせ、幸せな気持ちにしていきました。



おしまい



2014.06 創作
お話・文章:村田正樹
絵:flap*kruppo

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